「けいおん!! #16」視聴

演奏しなくなったHTTと、盛り上がるOP/ED


【作品情報】 けいおん!!
ジャンル:アニメ
初出:2010年4月〜、京都アニメーション
梗概:バンドを組んだ女子高生たちの日常を、極力音楽シーンを省きながら描いた萌えアニメ
個人的評価:?????


【コメント】
第2期の折り返し以降、まったく演奏しなくなってしまった放課後ティータイム(以下HTT)。ライブはもちろん、練習風景すらなく、音楽のシーンはほとんど描写しなくなってしまった。第1期の葛藤はどこへやら、あずにゃんもすっかり丸くなってしまった。今回16話も、一瞬期待したが、結局は「ゆるーい仲間意識」へ回収されてしまいましたとさ。第1期「けいおん!」には、マジな音楽性を感じていたのですが・・。


これまでの「けいおん」関係エントリー
「けいおん!」視聴−−「あずにゃん問題」を考える - 雑想ノオト - 良いモノに触れたときの感動は代替不可能だから
「けいおん!! #10先生!」を見た。 - 雑想ノオト - 良いモノに触れたときの感動は代替不可能だから


ためしにどれぐらい演奏していないのか、書き出してみた。

けいおん!!」作中における主だった音楽描写


#1 唯のソロ練習で幕を開ける。思えばこのオープニング自体がミスリードか。
  新歓ライブキターと思わせて「ふわふわ時間」のエンドが漏れ聞こえるだけ。


#5 梓・憂・純の2年トリオが「むすんでひらいて」をちょいセッション。


#6 唯・憂姉妹が「あめふり」を歌う。


#7 澪のファンクラブ会で、新曲「ぴゅあぴゅあハート」披露。


#9 演芸大会で「ふでペン 〜ボールペン〜(ゆいあずVer.)」。


#10 DEATH DEVIL「ラヴ」


#12 夏フェス。


#13〜#16(直近) 楽器演奏シーン一切なし。


要するに、HTTとしてまともにバンド活動をしたのって、今のところ第7話だけじゃなかろうか。音楽的な内容が前面に出たのも、第12話ぐらいか。こうしてみると、もっともシビれたのは、主人公たちとは関係のない第10話だったりするから驚きだ。

毎週放送されている本編は、あれは実はOP/EDを聴くための予備物語であり、OP/EDの楽曲・映像こそが音楽面での本編ではないか、と妄想したくなってくる。OPの3作の作曲を手がけたTom-H@ckさんのインタビューがDTMマガジン8月号に掲載されていた。唯と梓のプレイスタイルを想像し、ギターのアレンジを変えているそうで、何とも涙ぐましい努力をされている。が、当の本編は皆さんも知ってのとおりの体たらくである。

ここ最近のCD売らんかな路線が気になり始めている。第1期では確かにあったはずのバンドモノとしての面白さをOP/EDに囲い込んでしまい、結果、CDの購買意欲を煽っているところってないか。楽曲自体のクオリティは、キャラ萌えを差っ引いたとしても結構高いということは、ある程度皆さん共通の認識ではないかと思う。物語としての「けいおん」に音楽性を求めているのはお前ぐらいのもんだ、と知人に言われてしまったが、果たしで本当にそうなんだろうか。第1期であったあの感動は一体いずこへ・・。

ちょっとここで、無駄に情熱を発揮し、歴代のOP/ED、及び挿入曲を、それぞれ物語「けいおん」内部の位相に位置付けてみます。

【「けいおん」物語世界】

けいおん」作中内でHTTが演奏した楽曲。物語上もHTTが作詞作曲したオリジナル曲という扱い。「ふわふわ時間」は実際に発売されたCDの作詞クレジットも「秋山澪」となっている。実際に(物語内部でという意味)高校生素人バンド・HTTが演奏できるのはこのレベルの楽曲かと。下記OP曲に比べて、非常にシンプルな楽曲。



【オープニング】

架空度がワンランクアップ。OP映像は桜高を舞台にしたもので、HTTが演奏したかに作られている。が、あくまで物語外の位置づけ。本編中で、たとえば学祭などでこれらの楽曲を演奏することはない。「ふわふわ時間」などよりも明らかに難易度高く、凝った楽曲。素人バンドには実際には無理そうだけど、架空の物語時間が流れるOP内では、楽しそうに演奏するHTT、とノリノリな桜高生が描かれる(「Utauyo!!MIRACLE」など)。



【エンディング】

  • Don't say "layz"
  • Listen!
  • NO, Thank You!

さらにもうワンランク架空に。3曲とも澪(っぽい)キャラクターがメインVo。PVみたいな映像で、どこだか知らんが架空の世界。衣装も普段の制服ではなくてオシャレな格好に。完全にこのEDだけで物語世界を築こうとしている。本編ぶらさがりの二次創作的世界観。


本編で音楽をやらなくなってから特に、上記のような物語世界の階層性・多重性を感じるようになった。それぞれがお互いに世界観を補完しあっているような印象を非常に受ける。そもそもOP/EDのクレジットを「桜校軽音部」としている時点で、元来物語世界と実際の楽曲をリンクさせようとする意図は持っていた。いわゆるキャラソンである。ただ、話がバンドモノであり、OP/EDをまるでPVのような演奏シーンで描く「けいおん」の場合、楽曲と物語世界の間には、単なるキャラソンの枠を超えた関係性があるんじゃないか。

もし「けいおん」にあのOPと映像がなければ、果たして今ほどの人気を勝ち得ていたかどうか。原作コミックは、「本格的なバンド活動の描写よりも、メンバーたちののんびりとした日常を描写することに力点が置かれている」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%91%E3%81%84%E3%81%8A%E3%82%93!/)そうで、確かにそれは同意できる。が、最初のアニメ化でブレイクし、当時1・2巻が出てたコミックスの売上が、自分の周辺では約20倍に跳ね上がったのは、相当の所アニメ化に当たって付与された音楽性(OP/EDだったり、HTTのライブシーンだったり)が相当の所、原動力になってたんじゃねぇの? と思わざるを得ない。

それだけに製作者サイドは、「音楽やってて楽しい」というシーン、実際の演奏シーンを、第2期でも描こうと思えばいくらでも描けた・・んだけど敢えてやっていない、としか思えないんすよ。先程、作中での音楽シーンをまとめてみて、思った以上に演奏していないことが判明したわけだけれど、そうしたボリュームの問題に加え、物語内における音楽面の捉え方、扱い方も、第1期と2期の間には大きな隔たりがあるような気がしてならない。詳細を追う時間がないので割愛するが、第1期ってそこかしこにミュージシャン臭い描写が散りばめられていたような気がするんだが・・。今はもう1話丸ごと番外編、みたいな回がずーっと続いている印象だ。

残り3分の1、このまま今の人気と勢いにあやかって、キャラ萌え路線で行ってしまうのか・・。まぁ最悪それでもかまわんが、そろそろ何らかのヒネリを入れて軌道修正していただかないと。さすがにキャッキャウフフな2クールでした、だけじゃマズいような気がしている・・。