「TARI TARI 第8話」視聴

全体を包む音楽性・人間関係の「希薄さ」


【作品情報】 TARI TARI

TARI TARI 1 [DVD]

TARI TARI 1 [DVD]

ジャンル:アニメ
初出:2012年7月〜、P.A.WORKS
梗概:⇒wikiへGO!(手抜き)wikipedia:TARI TARI
個人的評価:★★★☆☆(星3つ)


【コメント】
超久々(約1年半ぶり)に更新です。何かキーボード叩いてたら最近見てるアニメのレビューが出来上がっていったので、勢いで載せちゃいます。



のっけから規範批評めいていて何だが、とりあえず現状言えることは、この作品を音楽モノとして見たとき、音楽はキャラクターたちが集まるための契機程度にしか働いておらず、真に音楽を愛した人たちの物語には見えない、ということ。音楽・合唱を一生懸命にやるというのが、物語の前面に出ていないことに、個人的な印象で申し訳ないが、非常に不満足感を覚えている。さあこれからみんなで練習だという時に、ピアノが調律されていなかったり、乗馬が気になったりで、音楽に集中できないストーリー展開が続きがちで、何だか肩すかしを喰らったような気持ちになる。原作なしのオリジナルということで、凄く期待感のあったアニメだったのだが。。

キャラたちの絡みも妙に淡く、何とも言えない感じが続いている。音楽を一番に愛するキャラは、母を亡くし一度は音楽を捨てた和奏、駅前でアカペラで一人歌っていた来夏の2人だけで、あとのメンツは友だち付き合いの延長として合唱を行っている、というのが現状。にしては登場人物たちが歌う(という設定の)挿入歌やEDテーマがいきなり上手くて、一瞬感動するんだがやはり違和感を覚える。一体いつの間にそんなに上手く歌えるようになったんだよと。バドミントンとか乗馬とかが一番の人たち(と後何がやりたいのかすらよく分からない帰国子女)が、音楽が好きでたまらない、けれどそれぞれ音楽に苦い経験を持ち、本流での活動(白浜高校声楽部)が出来ない2人に、音楽的な動機は薄いまま付き合う、というのがこのアニメの音楽をめぐる構造である。1クールの3/4まで来たが、これから音楽に目覚めていき、その面白さ・奥深さを共有しながら、人間関係を深めていくという展開には恐らくならないだろう。音楽はおまけ、ということにどうやらなりそうである。

たびたびで恐縮だが、「キラ☆キラ」との比較になるが、かの作品は、音楽を始めた動機としてはごく曖昧だった第二文芸部のメンバーたちが、音楽へのパッションやバンドをやってて楽しいという想いを、演奏技術の成長と共に強めていき、同時に彼らの人間関係の深まりを描いた物語であった。作り手が音楽畑の人たちだった「キラ☆キラ」は、音楽で人と人とが繋がるというドラマツルギーを描いた訳で、そうした作品は、同じく(一応)音楽方面の自分の贔屓目なんだろうが、単に作品を構成するいちパーツとしてしか音楽を扱っていない作品とは、まるで次元の違う面白さを備えたものだと思っている。


昔書いた「キラ☆キラ」レビューはこちら
「キラ☆キラ」プレイ中。千絵姉ルートを終えた所。 - 雑想ノオト - 良いモノに触れたときの感動は代替不可能だから


今回のTARI TARIはどうなんだろう。彼らは「合唱時々バドミントン部」を作って一体何を共有しようとするんだろうか。煮え切らない彼らを見て、教頭ではないが、お前ら何がしたいんだと言いたい気にはなる。その点がすごくフラストレーションで、また「キラ☆キラ」の良さを逆照射してしまう。かつて自分も声楽部に所属し、亡くなった和奏の母親・まひると歌を歌ってきた教頭の過去シーンが何度か挿入されるが、あれも一体どういう意味づけになっているのか。真面目に音楽をやるだけが素晴らしいのではなく、楽しいから音楽をやるというのも必要なことなんだよ(来夏・まひる)、というアンチ教養主義的なメッセージ性に心を動かされているのか。だとしたらそれはそれでアリだとは思うのだが、だからと言って「TARI TARI」における音楽の扱い方が、いまいち明瞭としないことに変わりはない。

そもそも音楽ということを取っ払ってみても、「合唱時々バドミントン部」の5人が目的・目標を共有して、まとまっていき、人間関係を深めていく・・という、部活ものでは王道(だと思う)展開になっていない。キャラクター個々のエピソードはかなり面白いと思うのだが、キャラクター同士がそれを共有できていない。和奏がもう一度音楽をやろうと決意したことに対し、たとえば同じく歌うことが好きな来夏のリアクションは、果たして充分に描かれていたのか(ただし紗羽の乗馬のエピソードでもそうだが、家族間の人間関係はかなり濃く描かれているのが「TARI TARI」の特徴)。もしかして最近のマンガ・アニメ・ラノベなどは、あまりガツガツした人間関係ではなく、こういうサラッとしたスタンスが好まれる傾向にあるんだろうか。その辺は寡聞にして良く分からないが、調査・分析してみる価値はありそうだ。



ここまで書いてきて何だか批判めいた意見ばかりになってしまったけど、それは、オリジナルアニメで音楽モノってだけで個人的な期待値が跳ね上がっているので、その分の反動が出てしまっている故だと思います。「TARI TARI」が好きで好きでたまらない人にはホント申し訳ないですが。残りの4〜5話で、音楽性やら人間関係やらをどうまとめていくのか、しっかりチェックしていきたいなと。(終)